平成28年度特別講演会ご案内(参加無料)
演題 統計力学を使って生物や社会における多様性の起源を探る
- 日時
- 平成28年6月9日(木) 15:35より17:00まで
- 場所
- 核融合科学研究所 4階 第一会議室
講師
名古屋大学大学院 情報科学研究科 教授
時田 恵一郎 先生
熱帯雨林や珊瑚礁など、生態系には数えきれないほどの生物種が共存しており、捕食被食、相利共生、競争、寄生など物理系には見られない複雑な相互作用を介しているのにも関わらず、通常はその個体数動態は安定していてカオスのような不安定性を見せません。しかも、それぞれの種の個体数の組み合わせ(「種の豊富さのパターン」と生態学者は呼んでいます)は、対数級数や対数正規分布などの単純な分布に適合することを生態学者たちは報告してきました。そのような生態系の多様性、複雑性、安定性、種の豊富さのパターンがどのようなメカニズムによって実現されるのかは、「20世紀の生態学における未解決問題」のひとつとして知られ、現在も生態学研究の中心課題となっていますが、実はその重要な転換点では物理学者による貢献も大きなものがありました。そのような数理生態学研究の簡単な歴史から始めて、生態系を含む生物・社会ネットワークのモデルに対する最近の統計力学的解析の例をご紹介します。